代償分割 遺産分割協議

  • 2023.09.27.

    相続

    代償分割 遺産分割協議

相続した遺産を分割する方法はさまざまありますが、慣れ親しんだ不動産を売却したくない場合は、代償分割をすることで解決できるケースがあります。
ただし、代償金を支払う資金力が必要であったり、トラブルに発展したりする可能性もあるため注意が必要です。
そこで、不動産を相続する予定がある方に向けて、代償分割とはどのような分割方法なのか、またメリットや遺産分割協議書の書き方についてご紹介します。
八王子市で不動産を所有していらっしゃる方は、ぜひ参考にしてみてください。

相続後の分割方法の1つである「代償分割」とは

相続財産の分割方法には、代償分割、現物分割、換価分割、共有分割の4つの方法があります。
ここでは、分割方法の1つである「代償分割」に焦点をあて、ご紹介します。

代償分割とは

代償分割とは、相続人の1人が相続財産を取得して、ほかの相続人にはその代償として現金などを支払う分割方法です。
代償金として支払う金額は、民法で定められている法定相続分に応じて計算します。
たとえば、3,000万円の価値のある不動産があり、子ども2人が相続するとします。
子どものうち1人が不動産を相続して、もう1人の子どもに1,500万円の代償金を支払うのが代償分割による方法です。

代償分割がおすすめのケース

代償分割での分割方法が用いられるケースは以下のような場合です。
• 被相続人と同居していた相続人が住み続ける場合
• 代償金を支払うだけの資金力がある場合
• 事業を承継したい場合
• 遺産が不動産のみの場合

被相続人と同居していたためそのまま住み続けたい場合は、代償分割が用いられるのが一般的です。
ただし代償分割をおこなう際は、ほかの相続人へ代償金を支払うだけの資金力が必要になります。
そのため、不動産の取得希望者に資金力がある場合に有効な手段と言えるでしょう。

そのほかの分割方法

代償分割のほかに、遺産の分割方法とはどのようなものがあるのかを見ていきましょう。
• 現物分割:相続財産をそのままの状態で相続する方法
• 換価分割:相続財産を売却し現金化してから分割する方法
• 共有分割:相続財産の一部もしくは全部を相続人で共同に相続する方法

どの方法を選択するのかは、相続財産の内容や相続額、相続人の立場や状況によって異なります。
なお、遺産分割をおこなう前に相続人と相続財産の範囲を確定させておく必要があります。

相続時に代償分割をおこなうメリット・デメリットとは

相続時に代償分割を選択した場合、どのようなメリット・デメリットがあるのかご紹介します。

代償分割のメリット

代償分割のメリットは以下のように2つあります。
メリット①共有名義を回避でき将来的に所有者単独で売却できる
不動産は安易に分割することができないため、複数の相続人で取得するケースも少なくありません。
共有で不動産を所有すれば、将来的に大きなトラブルに発展する可能性もあります。
たとえば、共有名義の不動産は売却する際に共有者全員の同意を得なければなりません。
一方で、代償分割は単独で所有できるため、将来的に売却したい場合は所有者の判断だけで売却できるなどのメリットがあります。
メリット②売却せずに済む
被相続人が住んでいた家に同居していた相続人にとっては、代償分割をおこなうことで売却せずに住み続けることができる点がメリットといえます。
長年引き継がれてきた不動産を残しておきたい場合には、代償分割が良いでしょう。
メリット③相続税の節税対策になる
不動産を売却しないで相続すると、相続税の節税につながる可能性があります。
土地には小規模宅地等の特例が適用されることが多いからです。
換価分割のように相続後に売却すると特例が適用されませんが、代償分割であれば特例を利用できるため相続税額を大きく減らせるというメリットがあります。

代償分割のデメリット

代償分割のデメリットは以下のように2つあります。
デメリット①代償金が支払えない場合は利用できない
代償分割の場合は、相続する代償として現金などを支払う必要があります。
そのため、代償金を支払うだけの資金力がない場合は、利用できないため注意が必要です。
デメリット②代償金を決める不動産評価方法でトラブルになる可能性がある
代償金額は、不動産の評価額によって決まります。
しかし、不動産の評価方法は相続税評価額や時価など複数あるため、評価方法によって評価額に差が出てしまいます。
民法では、不動産の評価方法について明確な決まりはありません。
そのため、不動産を取得する相続人は、できるだけ評価額を下げたほうが代償金を支払う額が少なくて済みます。
一方で、代償金を受け取る側は、不動産評価額が高いほうが多くの代償金をもらえるため、高い評価方法にしたいと考えるでしょう。
このように相続人同士で、どの評価方法を用いるのかで意見が分かれトラブルに発展する可能性があります。

相続後の代償分割における遺産分割協議書の書き方と相続税の計算方法

相続後は、遺産分割協議をおこない相続人全員で遺産分割について話し合う必要があります。
話がまとまれば「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。
ここでは、相続後に代償分割を選択した際の遺産分割協議書の書き方と、代償分割をした場合の相続税の計算方法についてご紹介します。

代償分割の遺産分割協議書の書き方

代償分割を選択した際の遺産分割協議書には、以下のことを記載します。
• 被相続人の氏名と住所
• 相続人と相続内容
• 代償分割による遺産分割であること
• 代償金の支払い期限
• 相続人全員の署名と実印の押印

遺産分割協議書は、とくに決められた書式などはありませんが、上記のことを最低限記載する必要があります。
また代償分割をおこなう場合は、遺産分割協議書の作成には注意しなければならないことがあります。
それは、代償分割をする際は必ず「代償分割による分割方法を用いたこと」を明記しなければなりません。
この記載がない場合は、代償金は相続とは関係ないと見なされ、贈与税が課税される可能性があるためです。
また、将来的にトラブルに発展しないためにも必ず遺産分割協議後に作成しておきましょう。

代償分割時の相続税の計算方法

代償分割で遺産を分割した場合は、代償金が相続税の課税対象となる可能性があります。
代償金を支払った側と受け取った側では、以下のように相続税の計算方法が異なります。
• 代償金を支払った側:相続税の課税対象=相続した遺産額-代償金額
• 代償金を受け取った側:相続税の課税対象=相続した遺産額+代償金額

なお、受け取った側に代償金以外に相続した遺産がある場合は、その財産を加算した金額が相続税の課税対象となります。

まとめ

相続後の分割方法の1つである代償分割とは何か、また代償分割のメリット・デメリットや遺産分割協議書の書き方についてご紹介しました。
代償分割は、不動産を残したい場合に有効な手段と言えますが、一方で資金力がなければ利用できない分割方法です。
また、遺産分割協議書には代償分割をおこなった旨を記載することを忘れないようにしましょう。
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